2015年1月4日日曜日

【学生残酷映画祭×シッチェス】『キョンシー』レビュー

 レビュー企画第1弾は、映画館での上映時もいきなり満席スタートだった『キョンシー』です。『即時型アレルギー反応ヲ惹起セシメル抗原物質』の岡室監督にレビューを執筆していただきました。ブルーレイ仕様も豪華な本作、ぜひその目でご覧ください。レンタル開始、ブルーレイ・DVD・デジタル配信リリースは24日より。


学生残酷映画祭2014上映作『即時型アレルギー反応ヲ惹起セシメル抗原物質』岡室耕司監督による『キョンシー』レビュー

マンション内で起こる不可解な事件をスタイリッシュな映像で綴ったサスペンス調の密室劇。
まずタイトルが良く無い。
キョンシーと言えば、昔世間を風靡したコメディタッチの映画のインパクトが強すぎて、テンテンに金おじいさん、何処か間抜けにぴょこぴょこ跳ねる屍にカンフーアクションを大いに期待してしまうのは私だけでは無いであろう。
次に終盤に向けて物語が見えてくるスタイルを取っているが、逆にそれがストーリーを進め観る上での途方も無くかったるい原因になっており、音楽だけが勝手に盛り上がっていて拍子抜け、カメラや照明が良い仕事をしているが故に実に勿体無い。
そうあればこそクライマックスくらいは…と期待が掛かってしまうのだが、そこは特筆に値する訳でもなく消化不足なまま映画は幕を閉じてしまう。
これはもう映画のCGの見せ処ろを切り張りして何かのPVにした方がいいんじゃないの?
と思わず言いたくなる。
そしてタイトルを死霊の館などにした方が期待を裏切られた感が無くて良い。
最後にこの作品は、霊幻道士のリブート作品との事で制作されたキョンシー映画との事だが、かつていろんな監督が、ロメロのゾンビ映画のリブートに挑戦して結果を残せなかったように、旧キョンシーは絶対なる完成された作品だ。
それだけにリブートは非常に困難を極めただろうが、あえてその無謀に真っ正面から挑戦した姿勢は評価したい。

学生残酷映画祭実行委員会による『キョンシー』レビュー

 おちぶれた俳優が自殺のために越してきた団地で邪霊やキョンシーの脅威に遭遇。霊幻道士を先祖に持つコックと共に戦いに挑むことに。
 80年代の楽しげな『霊幻道士』とは打って変わり、彩度を落とした映像で描かれるシリアスなアクションホラー。邪霊やキョンシーの姿も幽玄さや愛嬌から離れ、Jホラー的な薄気味悪さや機械的な重量感を纏っている。スローモーションを駆使した痛々しい残虐描写も。せ、背骨が…!

かつての『霊幻道士』シリーズ出演者の再結集は、単純なオマージュを越えた意味を持つようにも見える。というのも、元々このシリーズでは、たとえ同じ出演者が出ていても作品ごとに役は変わり、異なる世界が舞台になっている。まるでたくさんのパラレルワールドが存在しているかのよう。本作のラストは様々な解釈が可能だが、このパラレル性を頭に置いて見ると、この題材でこの物語を語ったことへの理解が深まり、主人公の見た世界が一層哀しく美しく響く。

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